2016.05.22 SUN - 読書ブログ
人生が息苦しいと感じたら。毒親からの離れ方「親離れできれば生きることは楽になる」加藤諦三著を読んで
記事を読んでいただきありがとうございます。一月万冊の大下周平です。今回取り上げるのは「親離れできれば生きることは楽になる」という本です。生きることに苦しさや虚しさ、何もうまくいかないというような絶望感を感じている人にはぜひ読んでほしい本です。親離れなんてできていると思っている人もぜひ一度目を通してみてほしいと思います。なぜなら親離れなんてしていると思っている私が、実際のところ社会人になった後も親に頼っていているからです。親にはむしろ援助をしていて、相談に乗っていることさえあるというぐらいまでいけば、親離れできていると言えるのかも知れません。とはいえ、そういう親離れできている人も、親離れできていない人のことを考える上で読んでみてほしいです。
息苦しさの原因は
何をするのもうまくいかないとか、どこからしら満たされないものを感じたり、趣味に打ち込んでいるときも心の底から楽しめなかったりとか、その原因として考えられるのが本書のタイトルともなっている親離れできていないことです。親離れできていない状態で社会に出て他人と関係を作っていこうとすると、部活の中や会社の中であれば上下関係が発生しますし、友人や恋愛という関係性で言えば対等な関係です。一方で親子関係は、対等というよりは子供に対して親が面倒をみたり、子供の成長において正しい方向へ親が導いていくような対等とは言い難い関係です。それは本来子どもが成人したり社会に出るまでの期間で終えておくことなのですが、親子関係にきちんと向き合わないというかけじめをつけないまま、社会に出ている人がたくさんいます。会社での人間関係、趣味における人間関係、友人関係、近所付き合いなど、そういった関係性全てを、親離れができていないがゆえに親子関係とごっちゃにして捉えてしまうと、いろんなところで問題が発生してきます。
毒親により子供の時に適切に愛情を受け取ることができなかった場合、それが本書にも書かれていますが、親離れをして独り立ちをしようとすることを阻害する要因となって立ちはだかります。ありのままの自分を認められない、自分の本心を偽る、自分の家庭を正しく評価できないなどなど。私自身、身に覚えのある話として、ありのままの自分を認められず、その分他人のことが気になって仕方がありませんでした。
これは中学生の時の話ですが、我が家ではデザートを作るということがなく、中学の時にできた友達の家に遊びに行った時、アップルパイが出てきてとてもびっくりしたのと同時に羨ましく思いました。その時になんて思ったのかというと、「デザートなんて買ってきた方がおいしいものがいっぱいだし、家で作るよりもよっぽどいい」と考えていました。ただそれを誰かに言うこともなく自分の中でそう処理していたのです。一度親に言ってみたこともありますが、普通に流されて終わり、それ以降一度も言ったことはありません。私自身の結論としては、買ってくるデザートが一番いいし、羨ましくともなんともないと、自分の本心を偽って無理やり自己肯定していました。
心の底では自分の言っていること、やっていることが嘘であると知っているのに、それを認めてしまえば、他人に対して敗北宣言をすることになる上に、自分のことも否定することになってしまうがために、強がっていたのです。本書にも書かれていますが、他人に対して対抗意識があると、実際の自分を自分が認められなくなります。ありのままの自分を肯定できないのです。他人よりも優位なのであれば喜んで認めるのですが、テストの点数で言えば劣っていたり、家で言えば自分の家や部屋よりも広かったりすると途端に認めたくないのです。どこかしらに粗を見つけて、だから自分よりも劣っていると考えてしまいます。
親からの愛情が得られなかった子供
子供の頃に親からの愛情が乏しく、それを獲得するために必死になった子供は、大人になっても他者からの評価に依存してしまいます。親からの愛情が得られないと特に幼少期の子供にとっては生死に関わる重大な問題です。だからなんとしてでも親からの愛情をそれこそ必死になって獲得しようとします。そんな経験をしてきた子どもが大きくなって、そのいびつな親子関係に終止符を打つことなく社会に出た時、たとえば仕事上の評価が自分自身の全ての評価として同一視してしまいます。もしくは恋人からの評価が自分自身のすべてを決めてしまうぐらいのインパクトを持ちます。私の母親は溺愛という表現がしっくりくるぐらい私に対していろいろと世話をしてくれるのですが、その反面お母さんがいないとどうしようもないという状況も作り出していました。
これは私自身の経験としてもそうなのですが、仕事上で評価をする人は上司であったり、お客さんです。例えば何か失敗を犯して社長から怒られたときに、怒られたことに対してどう挽回するかを考えるのではなく、怒られたこと自体を過大評価し、もう自分の全てがダメだと思ってしまうことがよくありました。あくまで仕事上の評価ですから、仕事以外において私自身の価値がなくなったなんていうことはないのに、切り分けることができないまま自信も失い投げやりになってしまうのです。そのたびにふてくされた対応をしてしまい、社長を余計に怒らせる結果になってしまいました。でもそれが自分のせいだとはわかっていても、その根本となる原因が親のせいだとは思ってもいませんでした。
要するに親がいないとどうしようもない、怒られたら我慢していればそのうちなんとかなるという、親との関係において対応していたことを社会に出てもしていたのです。ミスをした分どのように挽回するのか、他者からの評価は関係なく自分自身が現状を正しく判断し、自己責任でその解決のために立ち向かっていくのが本来の正しい姿です。ミスをカバーしたとしても社長からの評価は変わらないかも知れませんし、お客さんからの評価も変わらないかも知れません。それでも自分が起こしたことに対して適切な対応をとり、責任を果たすことが社会人として必要不可欠な姿です。
上記はあくまで過去の一例に過ぎませんが、そういった親との関係性が正しく構築できていないまま過ごしてしまうと、いろんなところで亀裂が生じ、それが自分に跳ね返ってきます。自分だけならまだしも、関係した人にも嫌な思いをさせてしまうので、本当に誰も幸せになりません。だからこそ親子関係に今こそ向き合っていく必要があります。続いているいびつな親子関係を終わらせ、自分自身の人生と向き合い、親とも新しい関係を構築する、もしくは関係を絶つことにより、人生が大きく変わっていくでしょう。
親から一人立ちするために
親との依存関係を断ち切るためにも最初にすることは、自分の中の親との関係性を思い起こし、親も普通の人であるという前提に立って考えてみることです。悪いところだけを取り上げるのではなく、親から教わった素晴らしいところも同時に思い出してみます。一方だけ見ているのは大変偏った考え方になってしまいますし、両面できちんと評価できるようになった方が、冷静に判断できていると言えるのではないでしょうか。良い面もあり悪い面もある。まさに普通の人です。それが私の親であり、すべての人の親にも言えることです。
私の母親は過干渉といえるぐらい、掃除にしろなんにしろ私が乳飲児であっても問題ないくらいあれこれやっていました。例えば、部屋の掃除一つとっても自分でしないで放置していると、そのうち勝手に母親が部屋の掃除をしてしまいます。耳掃除も自分で一度もしたことがなく、頼めば爪切りもしてくれたでしょう。ご飯をよそうのも片付けるのも全部母親がやってくれていましたし、身の回りのことで自分がすべきことなんていうのは本当にごく一部だけでした。その結果自分でするのではなく、誰かにしてもらうことが当たり前の大人になってしまったわけですが、それでうまくいくわけもありません。そういったよくなかったことも想起してあの対応は良くなかった。一方でマナーについて教えてくれたり、いろんなところに遊びに連れて行ってもらったことは良かったと思います。私は読書を通じて過去の整理と、未来についてのことをよく考えます。自分自身親子関係を清算している最中なので、大きなことは言えないのですが、こうやって一つ一つ思い出して整理していくことで、心理的な親離れは確実に進んでいると実感しています。
親とのこれから
まず真っ先に考えることは親からの評価や親がどう思うかではなく、自分自身の人生についてです。要するに自分の未来についてしっかりと考えることをまず始め、親がいなくてもしたいと思えることを考えます。私もそうでしたが、未来のことを考えない上に、親離れもできておらず、漠然と日々を過ごしていると、精神的には子供のままの大人が過去を引きずったまま生きているという状態となってしまいます。そして周囲に迷惑をかけながらも、本人はそれが迷惑であるとさえ認識していないまま生きていくことになります。そんな生き方は誰も幸せにできませんし、もちろん自分自身も幸せではありません。何をしていても不安になったり、心から喜べなかったりする上に、外部からの刺激に反応を繰り返すだけの人生になってしまいます。
今の状態から脱し、実家にいるのであれば一人暮らしをしたり、すでに一人暮らしをしているのであれば親との連絡を絶ってみたりして、新しい環境に飛び込んでいくことが、一つのきっかけとなると思います。慣れ親しんだこれまでの環境こそが今の状態を生み出していると言えますし、そこを変えていくことこそが、自分自身の人生に取っても現在、そしてこれから出会う人々にとってもいいことになると思います。過去は過去として切り離し、未来に意識を向けることで、これからの人生を切り開いていけますし、そして本書を読むことはその助けになると思います。未来にこそやりたいことも、これからの人生も存在するのですから。過去の出来事にいつまでもとらわれていては、一度きりの人生ですし、とてももったいないです。この記事を読んで思うところがあった人はぜひ本書にも目を通してもらえたら幸いです。
大下 周平
一月万冊の清水と大学時代からの友人。ゲームが好き。清水にはじめて『こいつには絶対格ゲーで勝てない・・・!』と悔しがらせた男。彼と代表が対戦して勝てる可能性は5%以下。月に100〜300冊ほど読書をし、清水の会社で執行役員としても活躍!
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