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2014.03.13 THU - 読書ブログ

『日本は建前・三権分立 本音・一権集中』 最近話題の内閣法制局長官関連の本

『建前・三権分立 本音・一権集中』

西川伸一さんの本をまとめて何冊か読んだ。西川さんは日本の政治学者。明治大学政治経済学部教授。この人の本はかなりおすすめ。

政治学のススメ
これでわかった!内閣法制局
立法の中枢 知られざる官庁 内閣法制局
立法の中枢 知られざる官庁 新・内閣法制局
日本司法の逆説
裁判官幹部人事の研究

などなどを読んだ。ここの視点に気がついていて本を出している人はかなり少ない。この人の本を読んで思ったのは日本は建前では三権分立だが本音ベース、実際ベースでは一権集中、あるいはよくても二権分立なんだなと痛感する。

西川さんの本で内閣法制局がよく取り上げられるのだけど、ここは殆ど黒子状態であまりクローズアップされない。しかし、かなり大きな権力を持っている。立法府で作られた法律は、この内閣法制局の審査が通らないと日本の法律として機能しないのだ。たった77人しかいないこの内閣法制局がそれだけでどれだけ強力な権力を持っているかがよくわかる。更に、びっくりするのはこの、内閣法制局長官は最高裁判所判事に天下ることがある。おいおいおいおい!それって、行政と司法の癒着やんけ!しかも、この行政府である内閣法制局はかなり『立法』に強烈に関わっている。権力は集中すると腐敗するとは昔から言われていることだけど、日本はどうやら本音ベースでは司法立法行政全て権力が分散されず集中していたらしい。何という恐ろしい状態なのだろう。

本来の立法機能は国会議員にあるはずだけど、国会議員は立法機能が果たせていない。これはテレビタレントが国会議員になるような国会議員そのものの質の低下もあるけど、そもそも、国会議員が自分の秘書達だけで内閣法制局相手に勝てるわけが無い。予算も人数も違う。内閣法制局に新しい法案が届くと、現在の日本の法律に照らし合わせて矛盾がないかをチェックする。その法律は2,000個近く有り、全てをチェックする。他にも色々と忙しい国会議員が現在の法律と一切矛盾が無い法案を文章で作り上げるのは不可能だ。

つまり、事実上、国会議員の立法権はかなり崩壊されている。日本は官僚が法律を作る、とよく批判されていたけど、ここには構造的な問題がはらんでいる。国会議員を安易に批判するばかりでは無く、彼らが法律を自由に作れる環境を作ってあげないと、国民の声は届かない。国会議員の立法を取り巻く今の状況は、予算も無い、他の仕事は忙しい、スタッフは足らない、だけどなんとかしろ!と言われているデスマーチのような状態だ。デスマーチ状態の国会議員達がしっかりと立法機能を持てず、官僚に法律を作ってもらっているというのが現実だとしたら司法/立法/行政の3つの権力は全て官僚が支配している一権集中ともいえる。

そう考えると、官僚とタッグを組んでいる自民党の憲法改正案の意図もよくわかる。現在の憲法の前文は日本国民は〜だけども、官僚主導の自民党が作る憲法改正案の前文が日本国は〜で始まる。憲法は国民主権を謳うはずなのに、まるで国が王様だと言わんばかりの憲法になっている。私は何故、こんな憲法の前文にしたのか疑問だった。しかし、官僚を王様にした官僚欽定憲法になってしまうのも内閣法制局や最高裁判所の人事を見るとある意味、官僚達からしたら当然なのか、とすら思う。この国は知らない間に激変している。

なんてことに思考が広がったのも西川さんの本のおかげだった。おすすめ^^

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清水 有高Yukou Shimizu

ビ・ハイア株式会社 代表取締役

一月万冊 清水有高(しみずゆうこう)滋賀県出身。元不登校児、母子家庭育ち。ビ・ハイア株式会社代表取締役。滋賀県立大学人間文化学部卒業。ベンチャー役員、上場企業役員などを経験しコーチ、投資家、経営者として活動中。東京大学を始め各種大学でも講演多数。コーチングと読書を経営に活かし営業利益1億円以上、自己資本比率70%の会社を経営。8年間でスタッフ1人あたりの営業利益を100倍以上にする。

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