2016.05.27 FRI - 読書ブログ
毒親 母が娘の人生を縛る『愛すべき娘たち』よしながふみ著
大好きな漫画家、よしながふみさん
こんにちは!一月万冊の大山です。今日は、よしながふみさんの漫画、『愛すべき娘たち』をご紹介したいと思います。漫画家、よしながふみさんといえば、映像化された『西洋骨董洋菓子店』や『大奥』でも人気のヒットメーカーです。
私の好きなBL作品のジャンルを切り開いてきた先進的漫画家の一人でもあり、私もBLファンとしてかなりたくさんの著書を集めています。単にマイノリティーの性愛を描くだけではなく、ポーカーフェイスの中に隠す大人の心の葛藤など、絵以上の説得力を持つ場面作りに長けた作家さんです。
最近では一般誌モーニングでゲイカップルの「ごはん事情」をめぐる日常系漫画『きのう何食べた?』を連載中で、淡々と毎回おいしい家庭料理のレシピを紹介するだけに見せて、一般的には「家庭」という言葉とは真逆に位置するゲイカップルの、家庭っぽくありつつも適度な距離感の取り方をリアルに描き、細かな人間関係をにじみ出させている手腕はさすがの一言です。そのよしながさんが今回手がけるのは、母と娘の親子関係です。
第1話、母子家庭に育った雪子は美しかった母がガンを契機に「自分の人生を生きる」と言い出し、娘の自分よりも3つも年下の元ホストの俳優志望の男性と突然再婚した(事後報告!)という衝撃の事実に直面します。いきなり始まる母と母の若い夫と娘の自分の3人家族の生活。いわゆるアラサーお一人さまでありつつも実家で母と暮らしている生活に何不自由なかった主人公が、突然結婚を意識させられる・・・。
というあらすじですが、これを読んだ時、最初に思ったのは
「私の母は自分の人生を生きれたのだろうか?」
という疑問でした。母は常に私に対して
「あんたのために」
「あんたのせいで」
と言っていました。母は、私を産むと決めたせいで好きな仕事をやめなければならなくなって、自分を捨てて子供を育て上げることだけに邁進してきた。それこそ、友人も作らず趣味もせず、子供のために仕事をして子供のために家庭に身を捧げてきた。だから、子供も応えてくれなきゃフェアじゃない。!!そう思っているような母でした。
被害者意識の塊である母
そんな、何かにつけて自分が家庭の被害者になっていると訴えている母だったので、私が何か母の気に入らないことをすると激しく罵られ叫ばれ、
「もう二度と同じこと言わせないで!!!」
と言いました。
それに応えて
「もうしません。ごめんなさい。私が悪かったです。」
と答える。これが鉄板で、母娘の約束事でルーチンワークでした。
少なくとも何度も何度もこのやりとりがあったと記憶しているということは、すなわち
「二度としない」
は守られなかったということです。小学生の当時、
「二度としない」
と何度も約束しては守れなかった自分を責めました。
「何度言われてもわからないダメな子」
と私が自分を戒めているのを見ていることが母は満足なようでした。
今となってはこれがおかしいと思えます。何か悪いことをしたのかもしれませんが、小学生にもならないころか何が悪いのかを論理的に教えてくれることもなく、絶対者である親が急にぶち切れるのです。ぶち切れてふざけるな!二度とやるな!!と激高します。
これが10年15年と大学のために家を出るまでずっと続きます。こんな環境は異常です。このような状態ではまともな親子関係も結べませんし、子育てとしても、子供が何が悪いのか良いことなのかサッパリ分からず、ただ、急に爆発して激高する親に怯えながら暮らすしかありません。
でも、母はちゃんとした子育て、には興味が無かったのだと思います。今ならそれが分かります。母にとって私は自分の人生を奪った加害者だったのです。母にとって自分は愛する対象と言うよりは復讐するべき加害者だったのです。これも、母の立場に立てばわかります。流されて結婚して、夫は殆ど家にいない。趣味も、仕事も辞めて家に入ったのにあんまりだ!と未熟なまま親になった母はそう思ったのでしょう。自分の人生を奪った加害者である娘、それが私でした。
その加害者が
「自分のせいです。ダメな人間です。」
と反省して落ち込んでいる様子を見て溜飲を下げていたのでしょう。そのせいで私は何かにつけて失敗したら
「自分のせいだ。」
と、深く落ち込み自分を責め
「こんな自分は生きていない方が世のためだ。」
とまで追い詰められるような性格になってしまいました。・・・というのを
「母のせいだ!」
と言えるようになってきたのも本当にごく最近の話です。物心つく前から
何が悪いのかを論理的に教えてくれることもなく
「お前が悪い!」
「二度とやるな!」
「またやったのか!お前は駄目な子だ!!」
「産まなければ良かった!!!」
「あんたのせいで!」
「あんたのせいで!」
「あんたのせいで!」
と何百回?何千回言われたことでしょうか。この状況が客観的におかしいと気づいたのは最近でした。
「母のせい」にして何が悪いのか
こういう風に言うと、
「お母さんだって頑張って育ててくれたんじゃない。」
とか
「愛情があるからあなたのためを思って言ってくれてたのよ。」
という人がいます。少なくとも本人も、
「私は娘のために自分を投げ打ってまで良いことをしている。」
確信していたに違い有りません。しかし、何があっても母が娘の自信を奪い、精神的に追い詰め、自分が
「ダメな人間」
だと思わせていい理由はないと思いませんか?
そもそも子供を作ったのは親の責任です。自分たちが欲しくて生んだ子供に対して、
「お前を生んだから私の人生が奪われた」
などとのたまうのは、逆恨みも良いところです。親として未熟だから、未熟で辛い部分を自分の責任にしたくなくて子供になすりつける。子供にとって親は自らの衣食住に関わる絶対の存在なので、独り立ちできるようになるまでは頼らざるを得ないとわかっていて、自らの未熟を隠して子供のせいにし、頼らせ依存させて、ストレスを発散させるが如く
「あんたが悪い、あんたが悪い」
と言い続けていることは、イジメ以外の何者でもありません。精神年齢が、子供と一緒なのです。自分が脅かされる、対等な存在として子供を見ているから、
「どちらが悪いのか」
ということで問題になります。親が本当に絶対的に優位な立場なのだとしたら、子供と争うことなく、余裕を持って守っていく行動に出るはずです。
子供を追い詰める親は子供と同じ精神年齢のまま、体だけ大きくなり、年を取り、周りもみんなしているからと、流されて子供を作ってしまったんでしょう。そんな、自分のしたことに責任も取れない被害者面のガキの精神年齢を持ったまま老いていこうとする母に対して文句の一つも言えないなら、それはやはり母と同じように誰かのせいにして自分で解決できない人生を歩む未来しか待っていません。
母はガキで、自分が大事な自己中だと気づいたら、さっさと棄てましょう
作中でも、雪子の母が雪子に対する八つ当たりを開き直ってふんぞり返り、雪子が唖然とするシーンがありますが、娘にとって母は絶対で、個人的な感情で八つ当たりなどしない聖母のような存在だと神格化してしまっているということがこのシーンに現れていると思います。特に、私のように「あんたが悪い」と言われ続けて育った人間は、「こんな悪い私でも養ってくれて怒ってくれている女神様」のように母を祭り上げてしまっていることが少なくありません。
しかし、そんな母は幻想で、現実の母は一人の子育て初心者で自分が救われたくて弱いものに責任を押しつけるいじめっ子です。いや、いじめっ子ババァです。精神年齢だけ子供のままで年を食って更に自分の権利や「子供を育て上げた功績」とやらを振りかざして色々要求してくるような難儀な母は、棄ててしまいましょう。
血のつながりがあるから、自分が犠牲に成らなければならないような気がしているだけで、他人でそういうめんどくさい人がいたら、自然と距離を置くはずです。かつての母も、自分も、「血のつながり」を理由にして本当の自分の責任を見ずに「いやいやだけど頑張ってる私」を主張していました。でももはやそんな母娘の「嫌だけど頑張りましたコント」に延々と付き合うのはごめん被りたいと私は思っています。
母が幸せだったかどうか。そんなことはわかりません。でも「あんたのせいで私は大変!」と言いたくて言ってきたならその状態が彼女のやりたいことだったのでしょう。その生き方でもうすぐ60年を生きようとしているのだから、私が私の基準で母を幸せにしようとするのはおこがましいです。
彼女はいじめっ子でガキで、周りに文句をタレながら老いていく人生を自ら選んでいるのだから私は違う流儀で、とばっちりを受けないように離れた場所で幸せに生きよう。と、切り離して考えてしまえばいい。母の幸せのために利用されるのはもうまっぴら!と強い気持ちで拒絶していきましょう。「親子だから」と脅迫してくるやっかいな人には、もう関わらないのが娘の幸せにとって重要なことです。
ただし、この問題は本当に根が深いです。何十年も
「お前が悪い!」
と言われ続けたので、どう考えても母親の方が悪いはずのことまで、全てそんな風に考える私が悪いんだ・・・とまるでカルトに洗脳されてる信者のような気持ちになります。
私もこういう文章を沢山書くことで気持ちを整理し、何がおかしいのか、おかしくないのかを見極めていきたいです。そして、他にも悩んでる娘さん達に
親がおかしいことは親がおかしい
親が悪いのは親が悪い
と思っていいんだと伝えるためにも書き続けたいと思います。
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