トップページ  » 読書ブログ  » 『20世紀の亡霊に取り憑かれた21世紀』

2014.03.08 SAT - 読書ブログ

『20世紀の亡霊に取り憑かれた21世紀』

『20世紀の亡霊に取り憑かれた21世紀』今朝、30冊ほど経済学者、社会学者の著作を読書をしていてそんなふうに思った。20世紀以前は物理資本主義時代である。その資本主義時代において、偉大な経営者の先輩諸氏であるマルクスやアダムスミス達は『労働価値説』を唱えた。

価格は何によって決まるのか?
それは価値によって決まる。
価値は何によって決まるのか?
それは投入された労働時間によって決まる。
投入された労働時間=価値である。
価値が高ければ高いほど高い価格がつく。
物理的な労働が中心だった20世紀以前においてこれは正しい。
熟練労働者とそうでない一般労働者との生産性の差は多くて数倍程度だった。

古くはテイラーが科学的経営管理法を考え、ドラッカーがマネジメントを提唱したとしても、20世紀の後半まで生産性の差は数倍程度だった。古典的な経営学者が生産性を上げるために考えた手法は確かに効果的だったが、その効果は物理的な縛られていたので良くも悪くも数割増し、数倍アップ程度だ。ドラッカーはGMのコンサルタントとして仕事をしていたが、それでもGMとフォード、ダイムラークライスラー、トヨタとの生産性の差が1万倍以上広がったことはない。

21世紀以降は情報資本主義時代である。

現代は価値を出す場所が物理次元から情報次元にシフトした。情報次元における生産性の差は物理次元と違い、1万倍、10万倍の差が生まれる世界である。それ故に20世紀以前の価値の公式『労働時間=価値』が成り立たなくなっている。

21世紀における価値は投入された思考の抽象度の高さと時間によって決まる。苫米地英人風に言えばグレインサイズの高さとクロックサイクルの早さによって決まる。つまり、21世紀における価値の公式は

『思考時間=価値』

となる。労働時間が物理次元に縛られている。極端な話、二人の斧を持った木こりがいたとして、片方がもう片方に対して1万倍のスピードで木を切れるわけがない。しかし、物理次元のくびきを離れた情報次元においては1万倍以上の差が生まれる。クロックサイクルとグレインサイズを早める物理的な束縛は脳の電気信号であり、それは光速で動く。

より深く、高く、広く、速く思考したモノが、多くの価値を出す。例えるなら文系出身の数学もよく分からないプログラマーと情報工学を博士課程で学んだプログラマーでは生産性が圧倒的に違う。知り合いの経営者によればプログラマーの生産性は出来る人と出来ない人では5~10倍でも最低違う、多ければ100倍以上違う、と言っている。しかも、これは作業者としてのプログラマーであり、実際に自分でプログラミングやソフトを創造する側の仕事になった場合、生産性は無限大に開くだろう。

実際問題、作業者としてのプログラマーの人月単価は安くて40~50万だ。しかし、高い人間は150~300万ほどで、中には人月ではなく、人時単価15万以上という人もいた。仮に1時間15万円で8時間働くなら人日単価は120万。その人が20日働くと2400万人月となる。40万のプログラマーとの差は60倍にもなる。だが、最も驚くべき事は21世紀においてその差は『たった60倍程度』と認識されるのだ。

20世紀から21世紀にかけて価値の源泉が大きく変わったことに気がついている人間は少ない。今は時代の過渡期であり、21世紀とはいえ前半で、20世紀の頃の成功者達が権力を握っている時代である。それ故、20世紀の成功方法が未だに時代遅れながら残っている。未だに多くの組織が『思考時間の質を高めることが価値を高めることである』ということに気づいて本気で取り組んでない。

このような時代の過渡期にある時、私達のような若い世代はどのように生きて、学び、読書し、働くのがいいのだろうか?私が今、新卒であればもっともやりたいことは『20世紀の古い考えに凝り固まった今の50代以降の権力者達が全員寿命で死ぬのを待つ』ことだ。それまではひたすら読書し、学び、自らの思考の価値を高めていきたい。

ただ、諸事情合って働く必要があるなら、なるべく20世紀の亡霊に取り憑かれないように生きる必要がある。考える前に身体を動かす的な根性論、生産性の差が数倍程度しかない前提に基づいた社会の考えに染まらないよう、生活に必要なお金は稼ぎつつ、学び続ける必要がある。しかも、恐ろしいことに思考時間の価値を認めず、ひたすら無思考に長時間労働し続けることによって成功してきた人達が現在も権力を握っているため、働いているとそっちに流れる誘惑を感じると言うことだ。

そうした古い亡霊に取り憑かれることなく、今が時代の過渡期である事を意識しながら読書し、生きて行きたい。

21世紀において価格は何によって決まるのか
それは価値によって決まる。ここまでは20世紀と一緒だ
では、価値は何によって決まるのか?
それは我々の思考時間の質による。
では、思考時間の質は何によって決まるのか?
それは我々のIQによってきまる。

21世紀において、新しく価値を生み、自由に人生を謳歌していくための方法論を私はまだ見つけていないけど、だからこそ楽しい。だからこそ学び、読書を続けたい。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

清水 有高Yukou Shimizu

ビ・ハイア株式会社 代表取締役

一月万冊 清水有高(しみずゆうこう)滋賀県出身。元不登校児、母子家庭育ち。ビ・ハイア株式会社代表取締役。滋賀県立大学人間文化学部卒業。ベンチャー役員、上場企業役員などを経験しコーチ、投資家、経営者として活動中。東京大学を始め各種大学でも講演多数。コーチングと読書を経営に活かし営業利益1億円以上、自己資本比率70%の会社を経営。8年間でスタッフ1人あたりの営業利益を100倍以上にする。

新着記事

人気ランキング